その2 「釜山かいわい:為せばなる精神、台所に浸透

2005年2月19日付朝日新聞西部本社版掲載
 
 
 
新年から生ゴミの分別が徹底化された。
韓国のゴミの捨て方は、区指定のゴミ袋(20リットルサイズが1枚80円!)に入れる一般ゴミと、地域の回収箱に入れる生ゴミ、リサイクルゴミ(空き缶、ビン、紙、プラスチック製品など)に区分して捨てるのだが、実際のところ分別は結構ゆるやかだった。
ところが、新年から生ゴミが混じっているゴミ袋は収集しない。さらには、生ゴミと混ぜて捨てた人から罰金を取るということになった。
これで困ったのはアジュンマ(おばさん)たちだ。これまでがゆるやかだったので、どこまでが生ゴミなのかがはっきりとしない。マンションでも、
「魚の骨はどうか、ミカンの皮はどうか」
と集まって相談しているが、一向にらちが明かない。というのも、自治体ごとに基準がばらばらで、はっきりとしていないからだ。ミカンの皮が一般ゴミになる自治体と、生ゴミになる自治体があって、統一基準がない。
韓国では一体に、「とりあえずやってみて、問題があったら修正しよう」という雰囲気が強く、ろくに準備もしないまま新制度が施行されたりする。これを「ハミョン・テンダ(為せばなる)」精神と言ったりもするが、日本人の目には往々にして「なるようになる」との境界があいまいに見える。
ただし、問題点が明らかになった後の対応の迅速さ、行動力は見上げたもので、「ハミョン・テンダ」精神が急速な発展の原動力となっているのも事実である。実際、今回も早速区から生ゴミの区分表が送られてきた。
区分表を見ると、骨、貝殻、栗の皮など、生ゴミとして捨ててはいけないものが列挙されている。だが、その中に「フグの内臓」と書かれているのには驚いた。「韓国では家でフグをさばくのか!?」。
まさか、まさかと思いながら周囲の韓国人に尋ねてみると、今でも一部のおばあさんたちは市場でフグを買ってきて、家でさばいているという。免許はなくとも慣れているから大丈夫だと言うのだが、誰にでも初心者の頃があったはずだ。
下手をすれば死んでしまうかもしれないのに、「ハミョン・テンダ」でさばいてしまっていたのだろうか。
こうなると、「ハミョン・テンダ」も命がけだ。
 
 

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